なんでも医のつぶやき⑧ 『相棒』と医療者に必要な3つの条件

『相棒』に登場する通称ヒマカップ(Ⓒ愛龍社)です。コーヒーや紅茶が程よく入ります(^^)
『相棒』に登場する通称ヒマカップ(Ⓒ愛龍社)です。コーヒーや紅茶が程よく入ります(^^)

こんにちは!(^-^) 

 

当院の外来と病棟のフロアにはテレビが設置されていて、病室のそれぞれにはベッドごとに個人用のテレビが備え付けられています。大分も昼前や夕方には時代劇や推理ドラマの再放送があるのですが、患者さんの人気が高い番組は、時代劇では『暴れん坊将軍』、推理ドラマでは『相棒』だそうです。『相棒』は私も好きで見ていますが、平成12年(2000年)から放映されている長寿番組で、警視庁のキャリア官僚から特命係という閑職に就いた警部と若い相棒が、優れた観察力で難事件を解決するという筋書ですね。

 

ところで『相棒』の主人公たちは地域の医療者にとっても必要な条件を備えていると思います。①十分な観察力があること(ドラマでは「細かいことが気になってしまうのが僕の悪いクセ」と言う定番のセリフがあります)、②ある程度の時間的余裕があること(ドラマでは隣の課長から「ヒマか?」と言われるのが定番です)、③各専門家と良い関係と適度な距離を保つこと(ドラマでは鑑識官と信頼関係で結ばれ、捜査一課の刑事らと時折衝突しながらも最終的には彼らが手柄を立てるように計らいます)、の3点です。

 

上記の②については、どの病院や診療所も忙しいことには大差ありませんが、大学病院で勤務していた時には診療以外の業務も多く、研究や教育はもちろんですが、行政向けに行うプレゼンテーション資料作り(業界用語でポンチ絵といいます)にも忙しかった頃に比べると、診療に専念できることがうれしいです。どんなに優れた観察力があっても、常に時間に追われていれば患者さん一人ひとりに対して長期のフォローアップが難しくなります。別の話題ですが、ある製薬会社に依頼された講演を1年に50回以上も行い、年間1千万円以上の謝礼金を受け取った医師が10人以上いたとのニュースもありました(参考:読売新聞2014年11月3日)。これまでどんなに名医という評判を得ていても、患者さんのために十分な時間を確保できないなら、『ヤブ医者』になってしまう可能性が避けられないのではと思います。

 

ところで『相棒』の一番のフィクションは、警視庁一のキャリア警察官が『ヒマ』なことかもしれませんね。実際は知る由もないのですが(^^;)       

 

                          (文:森本)