なんでも医のつぶやき⑥ 訪問診療とアルバム

戦前の大分県女子師範学校と大分第二高等女学校にあった奉安殿(左上)および大分第一高等女学校の運動会(右上)の絵葉書(著者所収)と、当院の診察室(下)です。ベッドサイドの超音波機器は往診でも使用します。
戦前の大分県女子師範学校と大分第二高等女学校にあった奉安殿(左上)および大分第一高等女学校の運動会(右上)の絵葉書(著者所収)と、当院の診察室(下)です。ベッドサイドの超音波機器は往診でも使用します。

 

こんにちは!(^-^) 

 

当院で水曜日と金曜日の午後は、通院が困難な患者さんに対して訪問診療を行っています。病院での外来診療や入院治療と違って、患者さんの生活空間に入ることで医療者にも多くの気づきがあり、様々なことを学べる機会です。これまでに勤務していた大学病院などでは不可能だった診療スタイルでもあります。

 

患者さんの容態が安定しているときには、私が回想法(認知症と地域支援の取り組みページ参照)を行っていることを知って、御家族が卒業アルバムを出して見せていただくことがあり、何冊か拝見するうちにあることに気が付きました。

 

昭和20年(1945年)以前の小学校卒業アルバムには「奉安殿(ほうあんでん)」という建物(または部屋)の写真が掲載されているのですが、昭和21年から後の卒業アルバムには掲載されていません。奉安殿とは天皇陛下の御写真と教育勅語などが納められた大切な空間であり、昭和20年(1945年)12月にGHQ(連合国最高司令部)の指令によって取り壊されるまで日本のすべての学校に備えられていたそうです。生まれ年でいうと、昭和15年度に生まれた高齢者から戦後の新制教育が行われているので、現在75歳より若い高齢者は奉安殿についてほとんどご存じないようです。歴史マニアの私も奉安殿について学校では習わず、訪問診療に行くようになって知ったので、75歳以上の方々に『昔の小学校に奉安殿がありましたか?』と伺うと、大抵は目を輝かせて『あったあった!!』と答えてくれることに新鮮な驚きがあります。側にいる患者さんの御家族は「???」という表情をされることが多いですが(^^;)。。。

 

上記のような話題を掲載した医学や認知症の教科書は私が知る限りありませんが、診療を行う上で長期記憶の確認に有用だと思います。また、上記の話題をきっかけに患者さんが心を打ち解けて話してくれることも少なくありません。皆様もご家庭で伺ってみてはいかがでしょう。

 

                       (文:森本)