なんでも医のつぶやき⑨ 「血圧の薬は一生飲み続けないといけないでしょうか?」

大分市にある吉野梅園の紅梅と白梅です。もう春ですね(^^)。
大分市にある吉野梅園の紅梅と白梅です。もう春ですね(^^)。

こんにちは!(^-^) 

 

今回は外来で患者さんからよく聞かれる質問についてお話したいと思います。

 

健康診断などで高血圧を指摘されて、当院に来院された場合は血圧手帳をお渡して、家庭での血圧を測定してもらいながら食事療法(減塩。肥満の場合はカロリーコントロール)や運動療法などを行い、それでも血圧が高いようなら薬物治療をお薦めしています。このときよく聞かれるのが表題の質問ですが、血圧の程度や合併症にもよりますが、肥満や喫煙などの生活習慣が改善されると、薬の減量や中止ができることが少なくないことをお話します。降圧薬の中でも利尿薬は、気温が高く汗をかきやすい夏などには減量して調節することもあります。一般に、年を重ねて動脈硬化が進んだ場合の血圧は下がりにくいですが、一生という長い目で考えた場合には例えば80~100歳で体格がある程度小さくなり、薬が減量ないし不要になる場合があることも経験します。

 

上記のような説明をすると、薬物治療を行うことを前向きに考えて下さる方がほとんどなのですが、必ずしも薬を一生飲み続けなくてもよいことは一般にあまり知られていない印象を受けています。ある患者さんは、『薬はずっと飲み続けないといけません』と、別のところで言われたそうですが、それはおそらく患者さんの自己判断で中止してはいけない(高血圧薬の服用を止めると、リバウンド現象といって急に血圧が上がることがあるため)というのが主旨だと思われます。薬を止めるには、医師が経過を見ながら、少しずつ減量するのが通常です。

 

日本で評論文芸を確立した小林秀雄(1902-1983  湯布院を愛したことでも有名)は、『(医者は)僕のことを昔からよく知っている先生じゃないとダメです。』(タバコをやめた話~文学の雑感・新潮CD講演 小林秀雄第一巻)と語り、現在の医療で行われているかかりつけ医(ホームドクター)を推奨しましたが、日頃から患者さんを診ている医師だからこそ、長年の変化を把握して薬の調節を適切に行うことができると思います。

           

                        (文:森本)