なんでも医のつぶやき⑪タバコ雑感~舘ひろしさんに憧れて吸い、舘さんのCMで禁煙した同級生

当院に掲示された禁煙啓蒙ポスター
当院に掲示された禁煙啓蒙ポスター

こんにちは!(^-^)

 

先日、母校の同窓会に出席した際、ある同級生が、『舘ひろしさんに憧れてタバコを吸い始めたけれど、舘さんのCM(註1)をきっかけに、禁煙外来を受診して止めたんや(^^;)。。』と話していました。私たち四十代にとって、子供の頃に見た刑事ドラマでかっこよくタバコを吸う警察官を演じていた舘さんは憧れの存在でした。六十代になられた現在も変わらない体型を維持しておられることも素晴らしいと思います註2

 

タバコ(喫煙)は私たちの祖父の世代の多くは職場や軍隊で覚え、父の世代は石原裕次郎さんなど映画スターの影響で吸い始めた方が多いそうです。私も自衛隊の訓練を実際に経験して感じたのですが、高い緊張感を伴う場面ではタバコの役割は確かにあるのだろうと思いました。

 

しかし現在では、タバコは肺がんやCOPD(慢性閉塞性肺疾患)などの呼吸器疾患をはじめ、心臓病や閉塞性動脈硬化症などの循環器疾患など、多くの病気の原因になることが知られており、当院でも撮影する胸部CTを見ただけで、長い喫煙歴があるかどうか大体検討がつきます。さらにタバコの喫煙習慣がない方も喫煙者と長年過ごすことによって、COPDなどになって呼吸機能が低下する『受動喫煙』の弊害も明らかになっています。一方で、喫煙を続けて80~90歳を過ぎても御元気なスモーカーもおられますが、タバコによる健康への影響に個人差がある原因の一つに、ニコチンを代謝する酵素の違いがあることが報告されています(註3、註4)。

 

ところで、日本では健康増進法が平成14年(2002年)に制定されて以来、公立病院などで分煙措置(院内に換気装置のついた喫煙所を設けるなど)が整備されたことを手始めに、最近ではほとんどの施設が全館禁煙や敷地内禁煙に移行している傾向にあります。後者は受動喫煙を防ぐという意味では理想的なのですが、たとえば(前の職場の)大分大学医学部附属病院の敷地外の道路脇に、入院患者さんが寒い日も暑い日も喫煙のために集まるという、ちょっと異様な光景が見られるようになりました。ただ5年前に訪れた米国の大学病院でも院外の道路脇に入院患者さんがタバコを吸いに大挙していた光景を見て、日米同じなんだな~と思った次第です。あくまで私見ですが、病院敷地内全面禁煙で入院患者さんを院外に追い出してしまうよりも、分煙の仕組みを充実させた方がよいと思っています。私はタバコは吸いませんが(^^;)。。。

 

参考サイト 

註1お医者さんと禁煙しよう~『喫煙歴40年の舘ひろしさんが禁煙に挑戦』ファイザー株式会社ニュースリリース2010年3月9日

註2)時事通信社 Youtube 配信動画「舘ひろしさんが女子高で禁煙を講義

     

註3)鎌滝哲也「CYP2A6の遺伝子多型と喫煙による発がんリスク」 喫煙の整理・薬理 喫煙科学研究財団                     

註4)中島美紀、横井毅「ニコチン代謝の個人差に影響を及ぼす遺伝子多型」喫煙の生理・薬理 喫煙科学研究財団

 

                    

                                                                            (文:森本)